月夜の怪物
午後六時三十分を過ぎ、塾へ向かうためマンションを出る木曜、あれは十五夜の時だった。
遅れ気味だった俺は黒いジャンパーを羽織り、非常階段を駆け下りる。エントランスの自動ドアが開き飛び出すと、日暮れだというのに子供たちの姿があった。どうやら親の集まりの帰りらしい様子で、童達ははしゃいでいた。邪魔だな、と思いつつも自転車を取るためその列に割り込もうと思った矢先、子供たちの中から甲高い声が聞こえた。
『あ、バケモンだああああああ!!!!!!!』
一瞬、何に向かってそう叫んだのかわからなかった。だが答えは俺に向かって投げられる視線によって明白にされた。
何を隠そう俺が化け物だったらしい。
化け物扱いされた俺としては、もう愛想笑いを浮かべ通り過ぎるしか無かった。周りの子供たちも便乗してはしゃぎ逃げ回っていた。そんな子供たちに親は一喝、『あんまり調子乗るな』と。
いや、俺への謝罪とかないのかよ...
百歩譲っても俺がバケモンであることは否定しろよ...お前...